「人をほめましょう。」
この言葉は自己啓発本などを読んでいるとよく目にします。
人をほめるといいというのは、ほとんどの人が知っています。
そして、ほとんどの人が実践してみようと考えています。
でも、ほとんどの人ができていません
ではなぜ、「人をほめる」ことがそんなに難しいのでしょうか。
次のような例の会話を参考にしていきましょう。
Aさん「昨日、夜の11時半にB社からクレームの電話があって、本当に参っちゃったよ。一生懸命話して、何とか納得してもらったけど…」
といったとします。
Aさんはこの会話の中で、二つのころをほめてほしいというシグナルを出しています。
皆さんはどこかわかりますか?
答えとしては、一つは、遅くまで仕事をしていたこと。
もう一つは、B社との交渉をうまくまとめたこと。
この二つを認めてほしいがための先ほどの発言です。
ここで、皆さんならなんと返しますか?
ここで「Aさん、遅くまでお仕事大変でしたね。Aさんがいてくださって助かりました。ありがとうございます。」
とほめてあげれば、かなり好感度が上がります。
ただし、これが結構苦痛なのです。
なぜでしょう?
それは、相手の行動を大変だと思うよりも先に自分の方がもっと大変だと、ついアピールしたくなるのが人間の本能だからです。
そうです。
人間は相手をほめる以上に、自分のことをほめてほしい生き物なのです。
では、Aさんに対し本音で返答した場合、どのような会話になるでしょう。
「そうでしたか、B社はよく夜遅くに電話してきますよね。私なんか先週夜の12時に電話がかかってきましたよ」
これでは相手をほめるどころか、自分の方がすごいとアピールしていることになってしまいますよね。
「Aさん、あの分からず屋のC部長をよくなだめましたね!」
これだけでいいのです。
でもなかなかこのようには言えず、
「C部長はおっかないですよね。私もなだめるのに、いつも苦労しています。」
と自分の手柄を被せてしまうのです。
このように、人をほめる効果は抜群なのですが、ほめるときに自分を認めてほしい本能を抑えなければならないから難しいのです。
ほめるときの主役はあくまでも、ほめられる人です。
コミュニケーションの達人は、会話の主役が誰かを常に考えています。
会話の主役は誰かを考え、相手の痛いことを把握して、それを返してあげれば的確にほめることができます。
ほめるというのは口先だけのお世辞ではなく、相手の一番認めてほしいことを「ちゃんとわかっているよ」と、伝えてあげることなのです。
だから喜んでもらえるのです。
皆さんが自分を捨てて、先に相手を認めるという苦痛さえ乗り越えれば、ほめることは簡単です。
また、相手が喜んでくれる、満たされてくれるという達成感があなたの喜びになれば苦痛もクリアできるでしょう。
「人をほめる」行為は、お金も時間もかけず、相手に喜んでもらえるので、コミュニケーション本でも必ずと言っていいほど推奨されています。
しかし、自制をする必要があるので、そんなに簡単なことではありません。
運のいい人は、相手を主役にして、喜ばせることができる人です。
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